【第83回】年間を通した実践的なトレーニングプログラムの組み方
「筋トレに取り組んだことがある人?」
こう聞かれたら、高校や大学の学生アスリートであっても大半が手を上げると思います。
一方で、「きちんとした筋力トレーニングを年間を通じて継続したことのある人?」
と聞かれたら一気に手が下がるのではないでしょうか?
今回はウエイトトレーニングを「継続する意義」と「継続の仕方」についてです。
筋力トレーニングを継続する意義
当たり前ですが、きちんと筋力トレーニングを行うと筋力は伸びます。しかし筋力トレーニングをやめてしまうと筋力は落ちていきます。
サッカーやバスケットボールなどの競技練習では筋力は維持できません。むしろ試合に多く出ているメンバーのほうが筋力の低下は大きいです。(こちら)
ではどのくらいの筋トレを行えば良いのか?
黒矢印はオフシーズンでのトレーニングによる筋力、スピードの向上。
赤矢印で示したのが週1回筋トレをしたグループ、青矢印で示したのが2週間に1回トレーニングをしたグループです。
見て分かるように、2週間に1回のトレーニングでは、得られた筋力やスピードの半分が12週間のうちに失われています。
2週間に1度でこの落ち幅なので、まったくやらなければもっと落ち幅は大きいでしょう。
では想像してみてください。
冬(12月~2月:3か月間)にきつい思いをして筋トレをし、筋力・瞬発力が身につきました。
3月~6月の4か月間は練習で忙しくて筋トレがほぼ行えていません。雨の日にするくらい。
7月の大事な試合で。。。
冬につけた筋力はどうなっているでしょうか・・?
きつい思いでやってきた筋トレが台無しですよね。。
維持のための週1のトレーニングといっても、上記の研究で行われていたのは最大挙上重量に近い重量(90%程度)でのスクワットを4回×3セット程度。
そんなにきつくはないですよね?時間もかかりませんし。
この研究の被験者くらいのレベルであれば、この程度の労力で筋力やスピードが維持できるようです。
費用対効果は半端なく高いですよね?
試合期のトレーニングの継続の仕方
まず前提として、筋力トレーニングは年間を通じて様々な負荷で行ったほうが筋力向上の効果が大きいため(Williams et al., 2017)、筋肥大を促すような高回数(8~10回程度)のものや、最大挙上重量に近い負荷をかけられる低回数(3~5回程度)のもの、その間くらいの負荷のトレーニングなど、様々な負荷で行うほうが良いとされています。
時期によってこれらの負荷を徐々に高回数→低回数の高強度に変えていくような期分けのしかたを線形ピリオダイゼーションといいます。
年間に重要な試合が2~3つしかない場合は、教科書的な線形ピリオダイゼーションがいいでしょう。
試合から遠い時期は比較的疲労の溜まる高回数のトレーニング。試合に近い時期は疲労の溜まりづらい低回数高強度のトレーニング。といった具合です。
一方、このトレーニングモデルが当てはめづらい競技やカテゴリもあるでしょう。
年間を通して試合があったり、リーグ戦のある時期があったり。。
例えば、僕が長いこと関わってきた関東の大学バスケであれば
・3月にシーズン初めの試合
・5月に関東のトーナメント
・9~10月にリーグ戦
・11月末にインカレ(全国大会)
といった具合に年間を通じて試合があります。
そういった場合でのトレーニングの継続方法の一例を紹介します。
代替わりをして12月からトレーニングを開始するとしましょう。
まず「重要度の低い試合は多少疲労溜まっててもいいや」と割り切ることも重要です。
例えば3月の試合をチームとして重要視していない場合はそこに合わせて大きく量を調節するようなことはしなくて大丈夫です。(3日前からは少し筋トレの量を落とすくらいはしてもいいかも)
そして5月の重要な試合①に向けて、量(回数)を落としつつに強度(重量)は上げていきます。(ここは線形ピリオダイゼーション)
そして重要な試合①が終わってから秋のリーグまでは再び線形ピリオダイゼーション。
リーグ戦に突入した場合は選択肢は2つあります。
A案:引き続き高強度低回数で、なるべく疲労を溜めないように筋力を維持する(週1回程度)
B案:土日が試合、月曜がオフなので、火曜に高回数中強度、木曜に低回数高強度で筋トレを行う(非線形ピリオダイゼーション)
図で示したのはB案ですね。
それぞれのメリット・デメリットとしては
A案
メリット :なるべく疲労を溜めずにリーグを戦える。筋力は最低限は維持できる。
デメリット:トレーニング量が少ないので、リーグ後半や重要な11月のインカレのときに筋肉量が落ちているかも(間接的に筋力も少し低下?)
B案
メリット :リーグ後半に向けて身体を作っていくことも可能。筋力も維持だけでなく向上ができる。
デメリット:A案よりは疲労が溜まりやすい
といったところでしょう。
とにかくリーグ戦の序盤、中盤でも結果を出したいチームはA案が、インカレでの結果を見据えたチームはB案が適しているのでしょう。
まとめ
まず大事なことは「年間を通じてトレーニングを継続すること」
その中で疲労の蓄積と筋力の向上のバランスを考えた、チームに合ったトレーニングの実施の仕方があります。
ここで紹介したのは1つの例にすぎません。
是非自分に合ったトレーニングの継続の仕方を考えてみてください。
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
暑い夏が続きますね。。。
仕事で長野に行くことが多いのですが、「今日から避暑や避暑~!」と思ったらこの前は長野でも暑かったです。。
日常生活の中で水分が抜けてると力が出ません。朝一500mlの水分摂取、日中で2Lの水を飲み切る、とか工夫をしてたらこの前のトレーニングは良い感じで力が出ました。
基本的なことですがお試しあれ~
参考資料
Williams, TD, Tolusso, D V., Fedewa, M V., and Esco, MR. Comparison of Periodized and Non-Periodized Resistance Training on Maximal Strength: A Meta-Analysis. Sport Med 47: 2083–2100, 2017