【第73回】筋力向上に効果的な強度は?セットは?
ウエイトトレーニングのプログラムを組む際に、様々な数値を設定しますよね。
強度(%1RM)、レップ数、セット数、レスト、、etc
これらの数値は常に同じようなものを用いていると刺激に身体が慣れてしまい、筋力向上への効果が薄れてしまいますし(第71回)、目的によっても数値の設定は違ってきます。
例えば、筋肥大を目的とする場合は総負荷(強度×レップ数×セット数)を大きくする必要があります(第70回)。
一方で最大筋力向上のためには比較的高い強度でトレーニングをする必要があると言われています。
では高い強度とはどのくらいなのでしょうか?また最大筋力向上を目的とした場合セット数はどのくらいで行えばいいのか?
前回の記事で紹介したように、やはりある程度の強度やボリューム(レップ数・セット数)を超えると逆に効果が薄れてしまうのでしょか?
これらの問いに答えるときに、考えなければいけないのが「被験者のトレーニングレベル」
例えばトレーニングレベルが低い人は、強度が低くボリュームが小さい刺激でも筋力向上が引き起こされます。しかし刺激に対するキャパシティが小さいので、行い過ぎると回復が追いつかないかもしれません。
逆にトレーニングレベルの高い人は、強度、ボリュームともに大きなものが必要でしょう。
本日は筋力向上に効果的な
・トレーニングレベル別の
・適切な強度
・適切なセット数
ついて検討した研究をご紹介します。
筋力向上と各変数の関係
Rheaらの研究グループが2003年以前に発表された研究を統合して、トレーニングの強度、頻度、セット数が筋力向上に与える影響についてのメタアナリシスを発表しています[2]。
その際に1年以上のトレーニング経験者(Trained)と、そうでない者(Untrained)に分けて分析をしており、さらに翌年(2004)には同様の解析を大学・プロの競技レベルのトレーニング経験者(Athlete)においても行っています[1]。
この2つの研究の結果をまとめて以下に紹介していきます。
強度(%1RM)
3グループ(Untrained、Trained、Athlete)における、各強度(%1RM)における筋力向上のESは以下の図ようになりました。
※上下に伸びる点線は標準偏差(SD)
※研究内で欠けているデータは、前後のデータの平均値をグラフにプロットのみ示しておりSDは表示していません(例えばUntrainedの65%は60%と70%の平均から算出、図示)
全体的な傾向としては
①全体的なESはトレーニング経験が浅いほど大きい(Untrained>Trained>Athlete)
②最も大きなESを示している強度はレベルが高くなるほど高い
といったものがみられますね。
UntrainedとTrainedのESが山型を描いているのは、強度が小さすぎれば刺激が足りないということでしょうし、強度が高すぎてもオーバートレーニングにより筋力の向上がみられなくなってしまうということでしょう。
UntrainedでESのピークが思いのほか比較的低い強度(60%)になっている一方で、80%1RM前後のESもSDの幅が非常に広くなっており、行い方(適切なボリューム?)によっては高強度でも大きな筋力の向上が見られるだろうことが読み取れます。個人的には一概に「Untrainedでは高強度のトレーニングは効率が悪いんだ!」といったことは言えないのでは。と考えています。
一方、Athleteにおいては70%1RM以下の刺激だと、ほぼ筋力の向上が見られていないことが分かります。
レベルの高い選手においてはこのくらいの負荷では刺激が足りないということですね。
また、TrainedとAthleteにおいては、この研究が発表された時点(2003~2004年)での85%1RM以上の強度の研究が不足しています。
そのためTrainedでは85%で80%よりもESが低下してしまっていますが、2004年以降の研究も統合するとまた違った結果が見えてくるかもしれませんね。
セット数
3グループ(Untrained、Trained、Athlete)における、各セット数における筋力向上のESは以下の図ようになりました。
全体的な傾向としては
①全体的なESはトレーニング経験が浅いほど大きい(Untrained>Trained>Athlete)
②最も大きなESを示しているセット数はレベルが高くなるほど多い
これは強度(%1RM)のデータとも同様ですね。
1セット目からセット数が増えるにつれてESは高くなっていきますが、ある点を超えるとオーバートレーニングからか、ESは低下していくようです。
また、Trainedの5セット目以降のデータ不足など、やはりこの時点での研究不足も否めませんね。
個人的にはAthleteのESが8セットで最も高くなっていることが意外でした。やはりある程度のレベルに達した選手は筋力向上においてもボリュームが必要なようです。
まとめ
筋力の向上はレベルの低い選手のほうが大きく、強度においてもセット数においてもレベルの高い選手ほど大きなものが必要だということがこれらの研究から分かりました。
しかしこれらのメタアナリシスは2つとも2003年、2004年と古く、近年の研究を含むと細かい結果(ESがピークになっている強度、セット数)などは若干変わってくるのではないかと思います。
また、この文献では含まれていなかった「レスト時間」「挙上速度」なども筋力の向上に関与するでしょう。
強度に対応したレップ数(5RMを5回など)で行っている研究もあれば、対応していない研究(5RMを3回など)もあるので、そのあたりの違いは今回の研究の分析では分かりません。
繰り返しになりますが、今回紹介したデータは2003~2004年までの研究のデータを統合したもの。
この知識をベースに、これ以降の研究結果を統合して考えるのが良さそうですね。
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
2018年の目標は
・パラレルスクワット170kg
・垂直跳び87㎝(ジャンプメーター)
・20m走2.95秒
です!
(ここで宣言をすることで自分への強制力がより働くので笑)
達成できるようにがんばります~
参考文献
- Peterson, MD, Rhea, MR, and Alvar, BA. Maximizing strength development in athletes: ameta-analysis to determine the dose- response relationship. J Strenght Cond Res 18: 377–382, 2004.
2. Rhea, MR, Alvar, BA, Burkett, LN, and Ball, SD. A meta-analysis to determine the dose response for strength development. Med Sci Sports Exerc 35: 456–464, 2003.