【第67回】足首のテーピングは本当にパフォーマンスを低下させるのか?
テーピングとサポーターでは足関節捻挫への予防効果は変わらない
足関節捻挫の発生率を15〜50%にまで低下させる
初発予防より再発予防の効果が高い
といった内容でした。
そのため、内反捻挫の予防にテーピングを用いるかサポーターを用いるが、はたまたどちらも使用しないかは
・巻いたときの不快感、動きづらさなど、個人の好み
・経済的な負担
・予防効果
これらを天秤にかけて決めれば良いのでは
という話でした。
しかしながらここで考えなければいけないのが
巻いたときに動きづらいからと言って、必ずしもパフォーマンスを低下させる(スプリントスピードやジャンプ力を低下させる)というわけではないのでは
ということ。
もしもパフォーマンスを低下させる効果があったとしても、その大きさによって、ポジティブな面と天秤にかけたときの結論は違ってきますよね。
(捻挫の予防効果vsパフォーマンスの阻害効果)
そこで今回は、足首のテーピングorサポーターがパフォーマンス(ジャンプ、スプリント、アジリティ)に与える影響について検討した研究をご紹介します。
足首のテーピング・サポーターがパフォーマンスに与える影響
Effects of Ankle Support on Lower-Extremity Functional Performance: A Meta-Analysis
Cordova et al., 2005
この論文では過去に発表されたテーピング・サポーターがパフォーマンス(スプリント、アジリティ、ジャンプ)に与える影響について検討した研究のデータをメタ解析して報告しています。
表は論文の中で示されたメタアナリシスの結果の一覧です。
ESはコントロール群に対して、テーピング・サポーター群のパフォーマンスがどの程度であったかを示しています。
つまり、数字がマイナスであればテーピング・サポーターを巻いたときのほうがパフォーマンスが低かったということになります。
すべての結果の90%CIが0をまたいでいるので、「テーピング・サポーターはパフォーマンスに悪影響である!」といったことは断言できません。
しかし、スプリント、ジャンプのところを見ると、パフォーマンスを阻害しそうな傾向はみてとれます。
(なぜ95%CIではなく90%CIであったかが気になりますが。。)
また、著者はスプリントのESについて%換算もしており、「テーピング・サポーターを巻くことで~1%程度パフォーマンスを阻害する可能性がある」と述べています。
結果の解釈は人によりけりでしょうが、この結果を基にして、テーピング・サポーターを巻くかどうかといった判断をどうするかは、競技、ポジション、既往歴などによりそうです。
テーピング・サポーターを巻く?巻かない?
足首のテーピングを巻くメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。
テーピング・サポーターを巻くかどうかのキーになりそうなのは
捻挫の発生率の低下(15~50%に)と
パフォーマンスの阻害(~1%)を
比較して、メリットがデメリットを上回るかどうかということろでしょう。
例えば、100m走選手に捻挫の既往があり、不安だからとテーピングを巻くのはナンセンスですよね?
(10.0秒の選手が1%スピードが低下すれば、10.1秒になります)
捻挫の既往があるバスケ選手が、シーズンを通して離脱をしないためには、その程度のデメリットがあったとしても巻いたほうがいいかもしれません。
野球選手で主に代走の切り札として活躍している選手なら。。?
このように、手段というのはその状況によって、薬にも毒にもなり得ます。
正しい判断ができるように、正しい情報を頭の中に入れておきましょう!
佐々部孝紀(ささべこうき)
追記
先日、臨床スポーツ医学会学術集会に参加してきました!
普段お世話になっている方々とお会いできたのも非常に良かったのですが、最先端のスポーツ医学の知識がアップデートできたので非常にためになりました。
僕自身はいつも肩書は「トレーナー」ではなく、なるべく「アスレティックトレーナー兼S&Cコーチ」と名乗っています。
(なんとなーくでメディカル、フィジカルを担当してます~。ではなく、両分野のプロフェッショナルです!という、自分への約束いうか、ただのこだわりです。笑)
普段から両分野の論文は読み漁っているのですが、今回学会に参加していろんな新鮮な情報を得ることで、最近少しトレーニングがわに寄りすぎてたかな~と気づきました。
なので今後も今回の記事のようなメディカル系のものも、自分の勉強がてらちょくちょく更新していくつもりです!
参考文献
Cordova, ML, Scott, BD, Ingersoll, CD, and Leblanc, MJ. Effects of ankle support on lower-extremity functional performance: A meta-analysis. Med Sci Sports Exerc 37: 635–641, 2005.