【第65回】シーズン中にトレーニングをやめたら努力が水の泡
オフシーズンにしっかりトレーニングを行って身体を作り、作った身体を競技練習に活かそう!(シーズン中はトレーニングは行わずに!)
なんてことは非常ーーーーにもったいないです。
なんなら、きついトレーニングを行った意味がないと言っても過言ではありません。
可逆性の原理
トレーニングの原理に「可逆性」といったものがあります。(可塑性ということもあります)
簡単に言うと、トレーニングで体力を高めても、やんなかったら元に戻りますよということです。
もちろんこれは筋力トレーニングで高めた筋力やパワー、それによって向上したスピードにも当てはまります。
つまりオフシーズンに筋力トレーニングで筋力を高めても、シーズン中に行わなければどんどん低下していき、シーズン後半には高める前のレベルまで戻ってしまう可能性があるということです。
多くの競技において、シーズンの終盤というのは重要な試合が多いですよね。(優勝争い、昇格、残留争いなど)
せっかくオフシーズンで辛い思いをして筋力を高めたのに、シーズン終盤の重要な試合でその努力が意味をなさないなんて悲しいですよね。。
そこで本日はシーズン中に、どの程度、どの位の頻度でトレーニングを行えば筋力を維持できるのか?を調べた研究をご紹介します。
シーズン中のトレーニング頻度 1週間に1回 vs 2週間に1回
Ronnestadら(2011)はプロサッカー選手14名に10週間のオフシーズンでの週2回のスクワットを中心とした筋力トレーニングを行わせ、その後の12週間のインシーズンの間、1週間に1回のトレーニング群(1回/週)と2週間に1回のトレーニング群(0.5回/週)に分けて筋力やスピードの変化を追いました。
その結果、以下のように1回/週のグループでは筋力もスピードも維持されたものの、0.5回/週のグループではオフシーズンに獲得した筋力、スピードが半分以上失われました。
筋力を維持するためのトレーニング量、頻度
スピードの向上は筋力の向上と非常に強い関係性があるため(Seitz et al., 2014)、0.5回/週のグループのスピードの低下はおそらく筋力の低下に伴ったものでしょう。
2週間に1回行ってもこれほど低下するので、まったく行わなかったらもっと低下のスピードは速いでしょう。
この研究ではオフシーズン週2回のトレーニングでは10週間の中でスクワットを10RM×3セット⇒4RM×3セットで行い、1回/週のグループも0.5回/週のグループもインシーズン12週間では4RM×3で行っています。
この研究の結果から
12週間程度であれば、高強度、低ボリュームのトレーニングを週1回行うことで筋力は維持できる
といったことが言えそうです。
被験者特性を考慮する
ただ、この研究結果はすべての人に当てはまるわけではないでしょう。
トレーニングレベルが高い被験者は、トレーニングレベルが低い被験者よりも、維持のためにもより強度や頻度が求められると考えられます。
ちなみに、この研究に参加していたプロサッカー選手は
オフシーズン前ハーフスクワット1RM:139±7kg
インシーズン前ハーフスクワット1RM:163±8kg
でした。
また今回の研究では選手のスタメン・控えの割合などについては述べられていなかったのですが、バスケットボールにおける研究では、スタメンのほうが控え選手よりもシーズン中の筋力の低下は大きいといったことも示されています(Caterisano et al., 1997)。
そのあたりも考慮してトレーニングプログラムを組む必要もあるかもしれませんね。
まとめ
トレーニングはきついです。
時間も、労力も使います。
ただ、それは試合で高いパフォーマンスを発揮するため。
せっかくオフシーズンできつい思いをしたのなら、せめてそのトレーニングで得た筋力をシーズンが終わるまでしっかり維持しませんか?
執筆者:佐々部孝紀
参考文献
- Caterisano, A, Patrick, BT, Edenfield, WL, and Batson, MJ. The effects of a basketball season on aerobic and strength parameters among college men: Starters vs. reserves (abstr.). J Strength Cond Res 11: 21–24, 1997.
- Rønnestad, BR, Nymark, BS, and Raastad, T. Effects of In-Season Strength Maintenance Training Frequency in Professional Soccer Players. J Strength Cond Res 25: 2653–2660, 2011.Available from: http://content.wkhealth.com/linkback/openurl?sid=WKPTLP:landingpage&an=00124278-201110000-00003
- Seitz, LB, Reyes, A, Tran, TT, de Villarreal, ES, and Haff, GG. Increases in Lower-Body Strength Transfer Positively to Sprint Performance: A Systematic Review with Meta-Analysis. Sport. Med. 44: 1693–1702, 2014.