【第105回】トレーニングのための心理学~自己効力感を高めることでモチベーションアップ!

『いかに高いモチベーションでトレーニング(練習)に取り組むか』

これは指導者、もちろん選手自身にとっても世界共通の大きな課題だと思います。

今回は心理学の世界でも有名なバンデューラの『自己効力感』(1977)の理論から、そのヒントを考えていきます。

結果予期と効力予期

バンデューラ(1977)は、人の行動の発現やその継続性、努力量には『結果予期』と『効力予期』が影響を与えるとしています。

結果予期
⇒ある行動が確かな結果を導くという確信

効力予期
⇒その行動を自分が遂行できるという確信

そしてこの『効力予期』を自身がどの程度持っているのかを自身が感じることを『自己効力感』と言います。

トレーニングにしろ練習にしろ、まずは『結果予期』を高めること、言い換えると『この練習(トレーニング)をすることでどのようなものが得られるのか?』という理解をしっかりと深めることが重要です。

そして十分に『結果予期』が高まったら、次は『効力予期』、言い換えると『俺ならできる!感』を高めていきます。

この2つを高めることがモチベーションの向上にもつながると考えられます。

効力予期(自己効力感)を高める!

バンデューラは『効力予期の4つの源』として

・成功体験

・代理的体験

・言語的説得

・覚醒水準の調節

を挙げています。

成功体験

効力予期を高めようと思ったら、この成功体験(遂行行動の達成)が最も重要だとされています。

成功体験を積み重ねることで生まれる『努力をすれば困難な課題も達成できた!』という気持ちから、次第に他の課題に対する効力予期も高まっていきます。

小さな成功体験を積み重ねるためにも、トレーニングには短期目標(2か月程度の期間?)を設定して目標重量をクリアできた体験を繰り返すのが良いと考えられます。

代理的体験

他人が同じ課題を遂行できている様子を観察することで、自分にもできるんじゃないかという気持ちも高まります。

効力予期を高めるためには、特別なレベルの人が課題を遂行する様子だけでなく、様々なレベルの人が成功する様子を観察する必要があります。

そのためウエイトトレーニングを行うときには、自分と同等のレベルの選手とペアを組んで実施したり、時にはペアをシャッフルして周囲の選手たちの成長を感じると自分自身の効力予期も高まると考えられます。

言語的説得

『できるぞ!』といった周りからの言語的な激励はもちろんそのときの効力感を高めます。

また、その目標を達成するための具体的な方法の提示といった理論的な説得も有効でしょう。

また、課題に対する援助(トレーニングで言えば補助など)と合わせて行うことも効果的なようです。

覚醒水準の調節

※Bandura(1977)の本文では『Emotional Arousal』、直訳すると『情動的喚起』『情動的覚醒』となっていましたがここでは分かりやすく『覚醒水準の調節』と意訳

覚醒水準が高まると心拍数が高まります。

その状態で困難な課題に直面すると、人間は『不安』や『恐怖』を覚えます。

その高い覚醒水準を『不安』ではなく『気分が高揚している』というふうに解釈を変えることも方法の1つですが、バンデューラはそれよりもリラクセーション技法などで覚醒水準自体を下げることを推奨しています。

このアプローチは、トレーニングの効力予期を高めるというよりは、プレッシャーのかかる試合でのパフォーマンス発揮のときなどに有効でしょう。

日常のトレーニングにおいてはプレッシャーがかかる場面は少ないと思うので、高重量を扱うときなどには逆に覚醒水準を高いほうに持っていくアプローチ(サイキングアップ)が有効ではないでしょうか。

まとめ

トレーニングや練習のモチベーションを高めるためには

●結果予期を高める
・その課題を遂行することで、どのようなメリットがあるかを深く理解する

●効力予期を高める
・小さい成功体験から積み重ねる

・他人の成功体験も観察する

・周りからの励ましや、遂行できる能力を有していることを実感できるような説得

・不安を伴う課題の場合は、安心感を持てるように工夫する

といったことが有効です。

指導者も、選手同士でも工夫できることはたくさんあると思うので、是非参考にしてみてください!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


スポーツの秋、様々なスポーツがシーズンを開幕してますね。

関わっているチームの選手たちも活躍しており、そういった姿を見たり結果の報告を受けるのはやっぱりすごく嬉しいですね!


参考文献

1.            Bandura, A. Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioural change. Psychol Rev 84: 191–215, 1977.

 

 

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