【第42回】持久力を鍛えたいならラン?バイク?それとも?

持久力を鍛えるための1番良いトレーニングとはなんなのでしょうか?

坂道で持久力トレーニングを行うなら、下り坂よりも上り坂です。
関節の負担を減らしつつ、心肺機能に負荷をかけようとしたらそのほうがベターです(前々回記事より)。

また、持久力トレーニングは筋力向上を阻害しますが、エキセントリック収縮を含まないバイクは、ランニングに比べて筋肥大の阻害効果が小さいことが報告されています。(前回記事

さて、他にも持久力トレーニングには様々なものがあります。

バイク、ランニングの他にも水泳等がその代表です。

冒頭の問い「1番いいトレーニングは?」には答えることはできません。最適なトレーニングは状況によって変わってくるので。

今回の記事においては、前回、前々回の記事で紹介した科学的データ、解釈を基に、それぞれの持久力トレーニングの長所、短所を整理していきます。

接地の衝撃(関節への負担)

上り坂、下り坂の記事で挙げた、「関節への負担」は「接地の衝撃の大きさ」による影響が大きいです。

持久力トレーニングとしてよく採用される「ランニング」という運動は、この「関節への負担」があります。そのため実際に長距離走選手は、水泳選手やクロスカントリー選手よりも、慢性障害により長期間練習を離脱する傾向にあるようです(L.Ristolainen et al, 2009)。

しかしながら傷害発生のリスクは、身体にかかった負荷というより「急激な負荷の増加」によるものが大きいので(Billy T Hulin et al, 2015)、シーズン前にバイクや水泳ばっかりやってて、いざ競技練習(バスケやサッカー)をいきなり激しくやってしまうと身体がその衝撃に慣れていなくて、「ランニングをやってきてなかったこと」がリスクになります。

それにバイクだけやってても心肺機能は強くなりますが、試合で実際に走れるかというと微妙ですからね(笑)「持久力トレーニングに関しては」やはりトレーニングした動作において、より効率よくエネルギーを発揮できることを示すデータもありますし(Gregoire et al, 2009)。
(一方、ラントレやったからと言って、競技中の持久力がつくのかも「微妙です」→こちら

全体(競技練習、ジャンプトレーニング、持久力トレーニング)の負荷をみながら、そのたびに用いる種目を考えましょうってことですね。

筋肥大、最大筋力への影響

前回の記事で示した通り、ランもバイクも持久的なものであれば筋肥大や最大筋力の向上を阻害します。

また前回記事で示した通り、コンセントリックのみの運動であるバイクはランニングよりも筋肥大への阻害効果が小さかったので、同様に水泳やクロスカントリーもランニングほどのエキセントリック収縮はないので、筋肥大への阻害効果は小さいのではないでしょうか。

実際、クロスカントリー選手は長距離ランナーに比べて体重(おそらく筋量)が重い傾向にあります(U.Bergh et al, 1991)。
これがランニングによって筋肉の異化が促進された結果なのか、体重が軽い方がマラソンに有利だからかは断言できませんが。

一方、ランニングやバイクでは下半身の筋力向上は阻害されたものの、上半身の筋力トレーニングの効果は阻害されなかったとの報告もあるため(J.M.Wilson et al, 2012)、逆に上半身を使った持久力トレーニング(足にビート板を挟んだクロール、クロスカントリーのクラシカル?)であれば下半身の筋力向上の阻害効果が小さいorない可能性も考えられます。

まとめ

それぞれの持久力トレーニングの長所・短所をまとめると以下のようになります。
(だいぶ推測も入ってしまっているのですが。。)

チームのS&Cをしていると様々な状況があると思います。
・練習の負荷が高く下肢の慢性障害発生のリスクあり
・筋肥大・筋力向上が最優先
・数週間後に練習の負荷が大きくなることが予測できてる。。etc

トレーニングに絶対の正解はありません。

その場その場で適切な方法を使えるように、常に自分の中の引き出しは整理しておきたいですよね。

 

参考文献
L.Ristolainen et al
Type of sport is related to injury profile: A study on cross country skiers, swimmers, long-distance runners and soccer players. A retrospective 12-month study
Scand J Med Sci Sports 2010: 20: 384–393

Billy T Hulin, Tim J Gabbett, Daniel W Lawson, Peter Caputi, John A Sampson
The acute:chronic workload ratio predicts injury: high chronic workload may decrease injury risk in elite rugby league players
British Journal of Sports Medicine · October 2015

Gregoire P. Millet, V. E. Vleck, D. J. Bentley
Physiological Differences Between Cycling and Running
, Volume 39, Issue 3, pp 179–206

U. Bergh, B.Sjodin, A.Forsberg and J.Svedenhag
The relationship between body mass and oxygen uptake during runnning in human.
MEDICINE AND SCIENCE IN SPORTS AND EXERCISE 23(2)205-211

JACOB M. WILSON,1 PEDRO J. MARIN,2,3 MATTHEW R. RHEA,4 STEPHANIE M.C. WILSON,1 JEREMY P. LOENNEKE,5 AND JODY C. ANDERSON1
CONCURRENT TRAINING: AMETA-ANALYSIS EXAMINING INTERFERENCE OF AEROBIC AND RESISTANCE EXERCISES
Journal of Strength and Conditioning Research 26(8)/2293–2307

 

 

 

 

 

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